今年度の将棋界は、将棋界史上最大の激震が走っている。谷川会長が年明けに辞任を発表したが、それでも騒動は収束する雰囲気がない。早く正常な形に戻って欲しいと心から願っている。
年度末が近づき、順位戦も大詰めを迎えている。各級ともに面白い展開になっているが、ことA級に関しては挑戦・降級ともに面子が決まってきている。しかしそこは一番面白い最終局とラス前の8回戦、大熱戦を期待したい。
今回の注目はなんといってもAmebaTV「将棋チャンネル」の開局。将棋といえばニコ生だったが、果たしてどんな放送をしてくれるのか。将棋界の正常化を願いつつ、8回戦のみどころをまとめてみる。
AbemaTVで将棋チャンネル開局し、8回戦を完全生中継!
インターネット生放送「AbemaTV」で、2月1日に将棋チャンネルが開設する。その初回放送が、A級順位戦の8回戦。放送時間が翌日朝6時までになっているので、終局まで完全生放送するようだ。しかしラス前の一斉対局がネットでみれるとは、軽く驚き。
解説・聞き手陣は下記の通り。
【解説】鈴木大介八段、阿久津主税八段、中村太地六段
【聞き手】鈴木環那女流二段、山口恵梨子女流二段、室谷由紀女流二段
7回戦までの結果をおさらい
まずその前に。スマホ不正疑惑の影響で、今期のA級順位戦はイレギュラーだ。5戦以降の対三浦戦はすべて不戦勝になり、三浦九段は残留し降級は一人となっている。
7回戦を追えて単独首位は(9)稲葉陽八段。7戦全勝とし、プレーオフ以上を確定させた。2位と星2つ差なので、8回戦に勝てば、挑戦が決定する。
2位タイは、(1)羽生善治三冠と(7)広瀬章人八段の二人。プレーオフになるためには、稲葉八段が連敗し、かつ自身が連勝しないといけない。なお、8回戦の羽生三冠は不戦勝。
続いて3敗組は(2)行方尚史八段と(3)渡辺明竜王。そして(8)深浦康市九段も最終局が不戦勝。この三人は挑戦降級が関係ない。
さてここからは降級争い。まず(5)屋敷伸之九段。3勝をあげているが、佐藤・森内ともに2連勝の場合、降級となる。残り2戦のうち、1つでも勝てば残留となる。
次に(6)森内俊之九段。三人の中で順位が一番したなので、残り連敗するとかなり危ない状況。
そして現在最下位は(4)佐藤康光九段。まさかの1勝止まりでもう後がない。8回戦で負けると、降級の可能性も出てくる。
8回戦各対局の見どころなど
本来は5局行われるが、羽生ー三浦戦は行われないので4つの対局がある。各対局ごとに見どころを勝手に書いてみる。なお、敬称を入れると長くなるのは、僭越ながら省略する。
▲稲葉陽八段(7-0) – △渡辺明竜王(4-3)
最も注目カードはこの一戦。稲葉が勝てば、無条件で挑戦が決定する。対して渡辺は順位戦は挑戦降級は関係ない。ただ年下の新A級の全勝を簡単に許すとは思えない。相当な意地をみせてくると思われる。
対戦成績は渡辺4勝、稲葉2勝。直近は2015年竜王戦決勝T。稲葉十八番の横歩取り8四飛車を、渡辺が手厚く完封した。直前の2組決勝では矢倉戦を稲葉が勝っていて、その借りを返した形。挑戦を目指す稲葉にとって、この8回戦が大きな山だ。
戦型予想だが、稲葉は大一番で変化球を投げるとは思えない。対して後手の渡辺がどうするか。最近後手番では振り飛車、特にゴキゲン中飛車の採用が多い。しかし結果はあまりよくない。そして4日後には棋王戦五番勝負が開幕する。棋王戦でのネタをここで披露して、試してみる気もする。戦型は角換わりと予想、角換わりの最新流行形が見たい。
▲佐藤康光九段(1-6) – △深浦康市九段(3-4)
佐藤康にとって大一番。佐藤負けで森内勝ちだと、佐藤の降級がラス前で決まってしまう。対して、深浦は最終局・三浦戦の勝ちがあるので、実質4勝4敗で残留を決めている。
対戦成績は佐藤24勝、深浦23勝。2015年王将戦挑決リーグ、0勝4敗の先手の佐藤が向かい飛車にし、189手の大熱戦を佐藤が制した。そしてこの2人で思い出すのが、2年前のA級順位戦最終局。挑戦降級関係ない両者だったが、233手の末、深浦が1九の玉を討ち取った。この二人の対戦は、どんな状況であっても激戦必至だ。
戦型予想が難しい。後手の深浦は相手に合わせる居飛車党。問題は先手の佐藤だが、先手でもダイレクト向かい飛車をやったりする。しかし佐藤の直近の対澤田戦、矢倉戦で快勝している。今期調子が上がらない佐藤は、矢倉戦に命運をかけると。戦型は相矢倉戦と予想する。
▲屋敷伸之九段(3-4) – △森内俊之九段(2-5)
降級レースに関わっている両者の直接対決。屋敷は勝てば残留決定。森内も勝てば、佐藤の結果次第では残留。
対戦成績は森内12勝、屋敷7勝。直近は2016年10月の棋王戦挑決T。屋敷流の角換わりを、後手が右玉のように移動し、森内が快勝した。しかし今期のこの両者、屋敷も負け越していて、森内に至っては勝率2割台と不調。
森内後手だと振り飛車もたまに指すが、1/20朝日杯で採用し酷い出来だった。ここではやってこない。戦型予想は無難にいけば角換わりだろうが、棋王戦の敗戦イメージが強そうで、屋敷が避けるのではないかと推理。戦型は急戦調の矢倉戦と予想する。
▲行方尚史八段(4-3) – △広瀬章人八段(5-2)
広瀬は稲葉の結果次第だが、プレーオフの可能性を残している。一方、行方は挑戦降級関係なし。
対戦成績は行方5勝、広瀬4勝。直近は2016年4月の王位戦紅組。後手行方の角換わり棒銀を、先手広瀬が往なして快勝。それまで過去7戦連続で広瀬先手だったが、久しぶりの行方先手でもある。今期の広瀬は結婚も発表し、銀河戦準優勝と朝日杯ベスト4入りと調子は悪くない。一方、行方は勝率5割を切って、本調子ともいえない。
戦型は後手広瀬の振り飛車も考えられるが、ここでは使わないとみる。角換わりか横歩取りで確定だろうが、横歩取り変形型を広瀬が誘導しそうな気がする。戦型は横歩取りと予想。